脱力の土台
ピアノ演奏における脱力には重要な3つの要素があります。
- ゆるめる
- つなげる
- ささえる
それぞれについて、簡単に説明させて頂きます。
ゆるめる
身体の深部にある筋肉や関節の強張りをほぐし、緩めていきます。
今、どこを緩めているのかを明確に意識しながら、部分ごとに丁寧に緩めていき、全身の脱力、連動へとつなげていきます。
顎関節をゆるめることが全身の強張りを緩める第一歩。
なぜなら、顎関節(口)は動物の発生上において全ての器官の始まりだからです。
演奏するときや日常生活の中で、気付くと歯を食いしばっていませんか?
ピアノを弾くときに使うのは指先とよく言われます。
指はどこから始まっていますか?指はどこにつながっていますか?
指に負担をかけないためには、一部分だけでなく全体を連動させて使う必要があります。
まずは指から耳(顎関節)へとつながるラインをゆるめて自由に動かせるように整えます。
ピアノを弾くと足が疲れる。これって私だけ?
いえ、足が疲れるという悩みの相談はとても多いのです。
脚の筋肉は骨盤の中を通り、お腹の深層部へとつながっています。
このラインをゆるめて整えます。
上半身と下半身をつなげる役割を持つのが骨盤。
骨盤の周囲をゆるめることで、上半身と下半身を連動させ、骨盤を正しい位置、正しい形に整えます。
つなげる
ピアノを演奏する際に力が入ってしまう最大の原因と言っても過言ではないのは、指先だけ、足先だけのように、身体の末端’を一部分だけ動かそうとすることです。
上記のように、身体の各部分を丁寧にゆるめてほぐしていくと、各部位をそれぞれの部分のみで使わず、連携させて使うことができるようになります。
指から手首。手首から肩へ、顎関節へ。
腕の筋肉も、肩の周囲、脇の下、背中、肋骨の周辺と色々な部位へつながっています。
指が疲れるのは指先だけで弾いているから。
腱鞘炎になるのは腕全体のしなやかな連動が肘や手首で滞ってしまうから。
ペダルを踏んで脚が疲れるのは、たいてい足首だけ、または膝から下の筋肉だけでペダルを操作しているからです。
全身の筋肉の連動を理解し、意識する。
難しいことのように感じ、そんなことができるのかと疑問に思われる方も多いでしょう。
しかし、その具体的な方法はピアノ脱力法メソッドの内容を通じて体得することが可能です。
全身の筋肉をゆるめ、整え、連動させる。
その感覚が掴めても、脱力しきった状態でピアノを演奏するのは不可能です。
そこで必要になるのが正しいフォーム、脱力した身体の重みを受け止めるための支えです。
ささえる
腕の重さを支えるのは指です。指に乗る重みを受け止めるためには、正しい指のフォームの形成が必要です。
上半身の重さを支えるのは坐骨です。
坐骨に正しく体重を乗せ、上半身も下半身も自由に動かせるための姿勢を保つことが必要です。
そして更に身体の強度を増すために必要なのが、身体の内部に筒状の腔を作ること。
十分に筋肉が緩められた状態になれば、肋骨も動きます。
肺にしっかり空気を送り込み、肋骨を広げて身体を筒状に立てれば、力に頼ることなくボリュームのあるしっかりした音が出せるのです。
腰が反る、猫背になる等の悩みを持っている方は多いですが、身体の使い方を意識できるようになれば、正しい姿勢を作ることは可能です。
骨の周囲の筋肉を緩めることで、骨格は動きます。
自分で姿勢を整えることができると身体は安定し、全身を連動させて使えるようになると楽に弾けるので、心にも余裕が生まれます。
その結果、よりいっそう自分の音に耳を傾けることができるようになります。
以上、脱力に必要な3つの要素についてご説明しました。
- ゆるめる
- つなげる
- ささえる
しっかりと身体をゆるめて連携させ、必要な支えを作ってしなやかな動きを受け止める。
その理論的かつ具体的な方法を習得するためのプログラムがピアノ脱力法メソッドなのです。
全ての動きに理論的裏づけがあり、身体の使い方が具体的にマニュアル化されているため、一度受講されるとご自分でも実践できるようになります。
再現性の高さがこのメソッドの特徴であり強みです。
脱力した状態で演奏できるようになると、身体が楽になるだけではなく、精神的な安定も得られます。
ピアノ脱力法メソッドのセミナー受講生からは、舞台袖でメソッドの一部を実践して本番に備えることで、落ち着いて演奏できる、緊張がほぐれる、という声が本当に多数寄せられています。
次回は、ピアノ脱力法メソッドがどのような方に効果的かをお話します。